おもしろコラム 3月号
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 で、一言、「釣ったその場で食べる、漁師飯というのが一番美味い。これに敵う物はない」と。そして、続けて、「どうしても、東京に、持って行く間に鮮度が落ちてしまう。あとは、如何に、その鮮度を落とさないように調理するかが、料理人の腕」というような意味の事を言ってました。鮮度をできるだけ落とさないで調理する技術という意味では、確かに、東京や大阪などの一流店には、そういう人材が揃っているのでしょうから、その意味では、高額な食い物というのは、「産地まで行かなくても食べられる」という利点にお金を払っているとも言えるでしょう。 であれば、逆に言えば、「産地まで行って食べられる人」、もっと言えば、「産地に住んでる人」にとっては、必ずしも、この理屈は通らないわけですから、必ずしも、「高額な物が美味い」というわけでもないと・・・。私が敬愛する大橋武夫という人がこういうことを言ってました。「私はひとつの握り飯に1万円出しても惜しくないと思ったことがある。それは、糖尿病になって、食事制限されたときだ」と。 結局、これが、「食」という物に対する人間の本来のあり方なんでしょうね。(小説家 池田平太郎)2012-03

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