おもしろコラム 3月号
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なだれ(雪崩)とは真冬にだけ起きるものだと思っていませんか?確かに真冬、降り積もったばかりの雪が引き起こす雪崩も頻繁に起こります。しかしそれは「表層(ひょうそう)雪崩」といって降ったばかりの比較的軽い雪が崩れる現象です。その名のとおり、表面の雪だけが崩れるわけです。しかし3月に入ってから起きる雪崩はそうではない場合が大半です。3月にもなると、標高の高い山間部でも気温の上がる日が増えてきます。そうすると当然冷たく降り固まった雪も溶け始めます。そうなると、表面の雪だけではなく、もっと深い部分から、厚みを持った大量の雪が崩れます。地表付近の雪は、冬の初めからずっとそこに積もっていて上から新たに降り積もった雪の重みで圧縮され、重く、固くなっているので、表層雪崩よりもパワーがあります。この雪崩のことを「全層(ぜんそう)雪崩」といいます。  3月ともなると、平野部ではかなり暖かくなることもあります。それと同じ気分で山へハイキングに出かけ、思いがけず山頂付近からの全層雪崩に巻き込まれるという可能性は高いです。また、この時期になると山間部でも降水は雪ではなく雨になることもあり、 雨もまた雪を暖めて溶かし、雪崩を引き起こす要因に なります。山の中腹では雨が降っていなくても、平地や中腹よりも気温の低い山頂では雨が降っていることもあり得ますので、この時期の登山には充分な注意が必要になります。  また、雪泥流(せつでいりゅう)といって、水を多く含んだ大量の雪が山腹や河川を伝って一気に流れ落ちる現象も多発しているようです。これもやはり雨が多く降ったあとに発生するので、山へ行く際には当日の天気だけでなくそれ以前のお天気の経過にも注意を配る必要がありそうです。(気象予報士 チャーリー/絵:吉田たつちか)2008-033月はなだれの季節

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